サーミの血

背が高く手足が長い人々にバカにされ傷ついた。教師でさえ脳が文明に適応できないと決めつけている。不当な扱いを受けているにもかかわらず、差別する側より差別される我が身に流れる血を恥じる、その感情が痛々しくも切ない。

監督 アマンダ・ケンネル

出演 レーネ=セシリア・スパルロク/ミーア=エリーカ・スパルロク/マイ=ドリス・リンピ/ユリウス・フレイシャンデル/オッレ・サッリ

ナンバー 166

批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

ずっと避けてきた場所に帰らなければならない。そこでの生活は厳しく貧しかった。先進文化に触れるうちに、自分は留まるべき人間ではないと思うようになった。やがて親からもらった名前を捨て、過去を忘れようとした。物語は北欧少数民族の少女が自らの出自を封印し新たなアイデンティティを手にするまでを描く。背が高く手足が長い人々にバカにされ傷ついた。教師でさえ脳が文明に適応できないと決めつけている。顔や身体のサイズを細部まで測り無理やり裸にされて写真を撮られるなど、研究材料にされても文句を言えない。屈辱に耐えながらも、何とか開明人種の一端に加わりたいと願うヒロイン。不当な扱いを受けているにもかかわらず、差別する側より差別される我が身に流れる血を恥じる、その感情が痛々しくも切ない。

トナカイ遊牧民サーミ人の娘・エレ=マリャはスウェーデン同化教育を施す寄宿学校に在籍中。成績優秀な彼女はスウェーデン人学校への進学を希望するが叶わず、夏祭りで知り合ったニクラスを頼って街に出る。

草原に設えたテントに暮らし、トナカイとともに移動する日常。入浴の習慣などなく体臭が漂う。独特の服装も明らかに“土人”視されているサーミの少年少女たち。エレは絡んできた村の少年に耳を切られトナカイと同じ“マーキング”をされてしまう。そんな中、偏見を表情に出さないニクラスに彼女は恋をする。いきなり彼の家を訪ね一泊するが、遊牧民を見下す両親に追い出されてしまう。それでも強引にスウェーデン人学校にもぐりこむエレ。強い意志と行動力で運命を切り開かなければ自由も未来もないと知った彼女の決然とした眦が美しい。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

老いたエレは、妹の葬儀に参列するために数十年ぶりに故郷に戻る。だが、切り捨てた家族に対する自責の念は深く刻まれたまま。そして、エレが嫌っていた“嘘つきで泥棒のサーミ人”は実は彼女自身だったという皮肉。犠牲にしたものとどう向き合うべきか、複雑な思いが交差する彼女のまなざしが印象的だった。

オススメ度 ★★★★

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